所長短信 2023年

9月 帳簿のみの保存で仕入れ税額控除が認められる場合

月見

まさに60の手習いで約1年間、東京に通った中央大学のクレセント・アカデミー(租税法務講座)。皆様の応援のお陰で最後まで受講することができ、レポートも提出し、無事に修了いたしました。本当に多くの学びがありました。今後の実務と研究に活かしていきたいと思います。

さて、いよいよ10月からインボイス制度がスタートしますが、次のようなものについては、インボイスがなくても、帳簿だけの保存で仕入税額控除が認められます。
 ・3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
 ・入場券等が回収される取引
 ・古物商によるインボイス発行事業者以外の者からの古物の購入
 ・質屋等によるインボイス発行事業者以外の者からの質物の取得
 ・宅地建物取引業者のインボイス発行事業者以外の者からの建物の購入
 ・インボイス発行事業者以外の者からの再生資源または再生物品の購入
 ・3万円未満の自動販売機による販売等
 ・郵便切手を対価とする郵便サービス
 ・従業員に支給する出張旅費等

確かにインボイス制度はややこしく、これからまだ思いもよらなかった問題点が次々と見つかるかもしません。手間も掛かります。しかし、それに輪を掛けて納税者の不安を煽るような情報の氾濫は困ったものです。どうぞ不安に思わないで、不明な点はいつでも弊事務所にお尋ねください。

夏の疲れ、出ていませんか。どうぞ皆様ご自愛くださいませ。(税理士 忠岡 博)

修了証書表紙
修了証書

8月 買い手の振込手数料を売り手が負担した場合

水遊び

暑い日が続いています。皆様いかがお過ごしでしょうか。 

ガンダムにも声の出演をしていたアニメの声優さんがインボイス制度に反対する記者会見を行いました。私も元々インボイス制度には反対でしたが、この声優さん、「帳簿を付けるぐらいなら自分を磨くために時間を使いたい」だとか「税理士を雇うお金がない」だとか、報道の記事を見て唖然としました。声優である以前に、納税者としてどうなんでしょうね。業種が何であれ、消費税も所得税も、みんな時間を割いて、きちんと帳簿を付けて納税しているのです。それをサポートするために税理士がいるのです。インボイス云々よりも、そもそもこの人は申告納税制度をどう考えているのか、悲しくなりました。 

さて、売上代金を決済するとき、買い手が振込手数料を差し引いて入金してくることがあります。その場合の振込手数料の勘定科目は「支払手数料」「管理諸費」「通信費」「雑費」等、会社によって様々ですが、弊事務所は、今後、「売上値引き」に処理を統一するように指導していこうと思っています。本則課税の場合、費用科目で処理すると、インボイスがないと課税仕入れにできないからです。ところが「売上値引き」にすると、課税売上の消費税から、振込手数料分の消費税を差し引くことができます。その際、少額の返還インボイスの交付義務免除の適用がありますので、売り手も返還インボイスの交付も要らないのです。 

弊事務所は8月14日(月)~16日(水)は夏期休業をいたします。山の日の8月11日(金)から土日を挟んで6連休となり、ご不便をお掛けいたしますが、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。(税理士 忠岡 博)

7月 近畿税務研究センターの研究員になりました。

朝顔

暑中お見舞い申し上げます。いつも弊事務所に格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。皆様お変わりございませんか。私は、昨年の秋に体調を崩し、特に肺の白い影が気になるところでしたが、先頃の検査で、肺の影は消え、完治していることがわかりました。結局、何らかの原因で炎症を起こしていたのだろうとのこと。皆様にはご心配をお掛けし、申し訳ございませんでした。まだ他にも悪い所はありますが、そちらの諸悪の根源は肥満ですので、これからも減量に励んでいきたいと思っています。

さて、このたび、近畿税理士会のシンクタンクとして、国内外の税務、会計、経営、法律その他の社会科学ならびに税理士制度に関して中長期的な視点で継続的に研究していくことを目的に、「近畿税務研究センター」が設立されました。不肖、私も研究員の委嘱を受けることになりました。ご承知のとおり、私は従来から日本税法学会でも研究委員を拝命しており、折りあるごとに税法に関する研究論文を実務家の立場で発表してきましたが、これを機に、税務のプロフェッショナルとして、ますます最先端、最前線での研究に力を注ぐことになります。私としてはこの年齢で新たな挑戦をすることになりますが、この経験が私自身の税理士としての実力アップになり、事務所の職員のレベルアップにも、事務所全体のレベルの引き上げにも繋がるものと思っています。関与先の皆様に対して、より一層、質の高い仕事を提供できるように事務所が成長することを願っています。

これから暑い夏を迎えますが、どうぞ皆様お身体ご自愛ください。(税理士 忠岡 博)

6月 キャッシュレス納付のお勧め

雨

いつも格別のお引き立て、ありがとうございます。

最近、事務所を退職したアルバイトの青年に何か励ましになる書物を贈ろうと思って探したところ、内村鑑三『人生、何を成したかよりどう生きるか』(文響社、2021年)という本を見つけ、私も先に読んでみて大いに励まされました。もともと100年以上前に『後世への最大遺物』という題で出版された内村鑑三の講演録を現代語訳したもので、人生を懸けて後世に何を遺すべきかということなど、けっこう深い内容が説かれていました。アフガニスタンで銃殺された中村哲医師や、星野リゾートの星野佳路氏もこの本の影響を受けたそうで、私自身も、今やこの本が愛読書になりました。

さて、個人の「振替納税」の制度は以前から多くの方が利用しておられますが、パソコンやスマホで口座引き落としによって納付する「ダイレクト納付」や、PayPayなどのモバイルバンキング、インターネットバンキングを利用する方法など、最近はキャッシュレスで納付するの便利な方法が次々と生み出されています。ホームページからクレジットカードの番号を入力して納付する「クレジットカード納付」もあります。クレジットカード納付はけっこうな手数料が掛かりますが、税額の限度額がないので、金額が大きくなる場合にはこれが便利です。ポイントが貯まるものもあります。ぜひ、この機会に、弊事務所にご相談の上、キャッシュレス納付のご利用をご検討ください。

今月も弊事務所をよろしくお願い申し上げます。(税理士 忠岡 博)

人生、何を成したかよりどう生きるか

5月 創業73周年に寄せて

鯉のぼり

ゴールデンウィーク、皆様いかがお過ごしでしょう。いつも弊事務所に格別のお引き立てを賜り御礼申し上げます。 

さて、松下電器産業(現パナソニック)では、こんなエピソードが伝えられているそうです。昭和39年の大不況の折、苦境を打開するために販売店の店主を熱海に集めて会議を行いました。冒頭、松下幸之助会長は、「このままでは松下電器もお店も共に大変なことになる。だから皆さんと問題を共有するため、徹底的に話し合いたい。何日かかるかわからないが、わかり合えるまでやりましょう」と述べたそうです。すると、販売店から、松下電器の押し込み販売に対する不満が次々と噴出し、話は平行線をたどりました。ところが、3日目の昼近くになって、幸之助会長が突然、「今まで厳しいことを申し上げてきたが、一切の原因は松下にある。松下の慢心が原因です。長い間かわいがっていただいた恩顧を忘れていた。まことに申し訳ない」と謝罪したそうで、これで空気が一変し、これからは販売店と共存共栄していくことを誓い合ったそうです。 

この松下さんのエピソードを聞いて、いつも「愛し合い、談(はな)し合いなさい」と語っていた弊事務所の創業者・忠岡そう吉のことを思い出しました。「愛」という漢字は、「心」と「受」を合成したものです。「自分が」「自分が」ではなく、相手の心をしっかりと受け止め、受け入れることが愛なんですよね。愛の大切さ、コミュニケーションの大切さを再認識しました。 

これからも創業の精神を大切にして、「喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣く税理士事務所」であり続けたいと願っています。今後とも、よろしくお願い申し上げます。(税理士 忠岡 博)

4月 自計化支援と併せて、有料の記帳代行サービスを始めます。

桜

暖かい季節になりました。私たちは、業務のスキルアップのため、毎年春に人里離れた静かな環境で、一日集中して職員研修を行うことにしています。昨年は六甲山の施設で「変動損益計算書」について勉強しました。今年は近場で、槙尾山の和泉市立青少年の家(写真)に場所を移し、祖父が得意とした「資金繰り」について徹底的に勉強したいと思っています。そのため、4月21日(金)は事務所を休業いたします。ご不便をお掛けいたしますが、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

さて、10月から消費税のインボイス制度が導入されます。そうなると、従来よりも数段、手間のかかる記帳を求められることになります。私たちは記帳は自社で行うことをお薦めしており、そのスタンスは今後も変わることはありません。しかし、何らかの事情があるために自社で記帳できない関与先様がおられることも事実で、その方々が税務申告において不利になってはいけないとも考えています。自計化支援と併せて、本格的に記帳代行サービスを始める必要性を感じています。しかし、そうなると弊事務所職員の負担が大きくなり、人件費も掛かりますので、記帳代行は事業規模や仕訳数にかかわらず、すべて有料にさせていただこうと考えています。

何とぞご理解を賜りたく、よろしくお願いを申し上げます。(税理士 忠岡 博)

追記:4月21日(金)は上記研修のため、また5月1日(月)は創業記念日のため、事務所を休業いたします。よろしくお願いいたします。

和泉市立青少年の家

3月 病院の駐車場代は医療費控除の対象外

ひな祭り

私たちは「喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさい」という聖書の一節を企業理念に掲げ、愛の精神で関与先様に寄り添うことをモットーにしています。この愛の精神を涵養するため、今年から、毎朝、朝礼で聖書を読んでから仕事を始めることにしました。宗教チックにならないよう、あくまで教養書として新約聖書を読み進めています。まだ緒に就いたばかりですが、一同、心穏やかに一日を始めることができます。これによって、少しずつでも愛の精神を育んでいくことができればと願っています。

さて、所得税の医療費控除を行う際、病院へ行くための交通費は医療費に含めて取り扱われます。ところが、駐車場代は医療費控除の対象になりません。理由は、所得税法73条2項に「医療費とは、医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるもの」をいうと書かれているからです。病院へ行く時に乗る電車・バス・タクシーなどは、運転手さんの「人的役務の提供」ですから、その対価は医療費に含まれますが、駐車場代は土地の使用料であって、誰も人的役務を提供していませんから、その対価は医療費に含まれないのです。

医療費控除の規定は歴史が古く、昭和25年に創設されました。おそらく、この規定ができた頃は、自動車で病院へ行く人なんて、ほとんどいなかったのだと思います。だから、法律を作った人は、自動車を病院の有料駐車場にとめる人がいるということをまったく想定していなかったのでしょう。結果的に、こんな規定が、改正されることなく今日まで続いているんですね。

今月も弊事務所をよろしくお願いいたします。(税理士 忠岡 博)

新約聖書

2月 成人年齢の引き下げと贈与税

節分

いつも弊事務所に格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、昨年、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられました。そのため、昨年4月1日以降の贈与については、贈与税の規定で「20歳」とあるところを「18歳」と読み替えることになりました。したがって、たとえば、贈与を受けた年の1月1日現在20歳以上の人が、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与により取得した財産にかかる贈与税の計算に際しては「特例贈与財産」として一般の贈与財産よりも低い税率で計算するのが従来の規定でしたが、昨年4月1日以降の贈与については、この「贈与を受けた年の1月1日現在に20歳以上」とあるところを「贈与を受けた年の1月1日現在に18歳以上」と読み替えるわけですから、昨年1月1日現在18歳だった人は、1~3月に贈与により取得した財産については一般贈与財産として高い税率、4月以降に贈与により取得した財産については特例贈与財産として低い税率によって贈与税額を計算することになります。

なお、この人が、3月までにも4月以降にも贈与を受けている場合は、次のように計算します。

(1)すべての財産を一般税率(高い税率)で計算した税額に占める一般贈与財産の割合に応じた税額を計算します。

(2)すべての財産を特例税率(低い税率)で計算した税額に占める特例贈与財産の割合に応じた税額を計算します。

(3)納付すべき贈与税額は、①と②の合計額となります。

詳しくは弊事務所にお尋ねください。

本年も事務所は確定申告モードになりました。よろしくお願いします。(税理士 忠岡 博)

1月 明けましておめでとうございます。

凧あげ

旧年中は弊事務所に格別のお引き立てを賜り、ありがとうございました。

弊事務所は本年、創業73周年を迎えます。何せ、かつて南大阪地域で税理士業界の草創期を牽引してきた歴史のある事務所ですから、その一時代を担うというのはそれなりの覚悟が必要で、年を重ねるごとに私は身の引き締まる思いで新年を迎えています。本年も気持ちを新たに「喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさい」という企業理念のもと、徹底して関与先様に寄り添い、ガチで関与先様と向き合う一年にしたいと願っています。

  何でもできると思っている人は、
  やっているうちに
  できないことが見えてくるでしょう。
  何もできないと思っている人は、
  やっているうちに
  できることが見えてくるでしょう。
  大切なのは、
  一歩を踏む出すことです。

片柳弘史神父の言葉です(『こころの深呼吸 気づきと癒やしの言葉366』教文館、2017年)。「大切なのは一歩を踏み出すこと」だという言葉が心に響きました。本年も、弊事務所は全力で皆様をサポートいたします。ぜひ、夢に向かって一歩を踏み出しましょう。

本年も、弊事務所をよろしくお願い申し上げます。(税理士 忠岡 博)